森美術館【医学と芸術】展

六本木の森美術館で開催されている【医学と芸術】展を見に行きました。いつもは行こう行こうと思いつつ終了直前に滑り込みで見に行くのですが、今回は珍しく開始から1週間w


全体が3部構成になっていました。
第1部・身体の発見
入場してすぐ…
油彩の裸婦画。いや裸婦っていうか…
お姉さん、そんな格好だと完全に見えちゃってますよ
    …子宮の中が!
という内容の作品。
抱かれている赤ん坊も腹が切り裂かれ内臓が見えています。
生物図鑑にでも掲載されるようなあっけらかんとした(?)タッチで描かれているのですが…
その隣に飾られているのもやはり妊婦。
こちらもヌード…というか、半身から皮膚が剥がされ筋肉が露出しています。うーん。
最初からすごいのが来たなぁ。
解説によると体内の様子は『医学的には誤りがある』ということですが、当時は人気があったそうです。
次に、三輪自転車の荷台に載った巨大な心臓。
【リサイクル】というタイトルのその作品は、人の命を救うための臓器移植によって、臓器の闇売買などかえって人の命が軽視されることがあることを示しているそうで…
自転車の廻りには段ボールが積まれていたり、ペットボトルが落ちていたり、スポーツ新聞やタウン誌などがちらばっています。作者は中国人なのですが、これらの『再利用資源』は国ごとに変えているのでしょうか。
レオナルド・ダ・ヴィンチの手による解剖スケッチのうち2枚は日本初公開。牛の頭蓋骨中の脳室と肝臓。スケッチだけではなく、正確に形状を調べるために蝋を使って型を取る手法を考案したとか。ダ・ヴィンチは単なる画家ではなく学者でもあることを思い出させる話です。
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第2部・病と死との戦い
歯科治療で初めてエーテルを使用した場面の油絵など、治療風景を描いた絵画が数点。
奧の壁には、ドラマERの一場面のような現代の 手術風景の大きな写真が貼ってあったのですが…もっと近づいてよく見たら、なんと精密な絵でした。
…ちなみにそれを描いたのはデミアン・ハースト。牛を真っ二つに切り裂いた『母と子・分断されて』の作者でした。
このコーナーにあるのは『アート作品』よりむしろ実際に医療の現場で使われていたものが多数。
ケースの中には義手や義足、医療器具などがずらり。
初期の金属むき出しの義手にはじまって、機能や外見がどんどん進歩していくのがわかります。現代のシリコンゴム製のものは皮膚の下の血管まで表現されたリアルな『手』。
大隈重信が使っていた義足もありました。
ふいごを使って肺に損傷のある患者の呼吸を補助する鉄の肺、
電流の流れるカゴの中に患者を入れて血行をよくする電気治療器(患者の身体に直接電圧をかけて感電させるわけではないのが味噌)、
義眼50個セット(そんなにたくさん何に使うんだ)
…などなど。
『アート作品』の中で目を引いたのは、
ザラザラしたあまりきれいではない白い板が並んでいる…と思ったら、サンドペーパーに頭蓋骨をこすりつけて作った物だったり、
6500個もの経口避妊薬を縫い込んだウエディングドレスとか…。
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第3部・永遠の生と愛にむかって
さらに奇妙な展示が増えていきます。
脳の上にヒトが乗って手綱を付けている模型とか、
花柄模様の頭蓋骨型の菓子入れとか。
スーパーマンをはじめとするアメコミヒーロー達が年老いた姿で登場する『老人ホーム』。
等身大の蝋人形なのですが、スーパーマンは歩行器にしがみついてやっと立っている状態、キャプテンアメリカはベッドの上で点滴を受け、超人ハルクやMrファンタスティックはすっかり年老いて惚けてしまった様子…なぜかニコリのナンクロを解こうとしていたようです。
一見、携帯ゲーム機で遊ぶ二人の少年…と思いきや、近づいて顔を覗き込むとはっきりと老いの影がみられてしまう蝋人形。
これは、クローンによってうまれた生物が、細胞レベルでは最初から老化が進んでいたということから着想を得たものだそうです。
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最後に、一つの実験装置が。
ガラス管の中を循環するピンク色の液体。
液体がしたたり落ちるフラスコの中にあるそれは…
何かの生物の組織のような…。
ヴィクティムレス・レザー(犠牲なき皮)と呼ばれるそれは、ネズミの細胞から作り出した『皮』だそうで、実際に『生きて、成長している』という、いわば『半生物』。
ニューヨークで展示された時には成長しすぎて装置を詰まらせてしまい、栄養液の循環を止めて『死なせた』というエピソードも。
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医療器具や医学教育用として作られた物など純粋な『医学』寄りのものから、
『アート』側の『リサイクル』や『老人ホーム』などの作品。
そしてそれらの間にあると考えられる、収集家向けの解剖模型など…。
中にはグロテスクなものもありますが、生命というものについていろいろな角度から考えさせてくれる、非常に面白い展示でした。

コメント

  1. 医学と芸術展に行ってきました。(森美術館 東京)

    この展覧会は遅くまでやっている。夜10時まで開館なので、夕方7時に出かけてゆっくり観るつもりだったが、あまりの展示物の数の多さに時間が足りなくなってしまった

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