摩周丸

旅行3日目、函館市内の有名スポットを回ります。まずは朝イチで、函館駅にも近い摩周丸の見学です。10数年まえにも見学しているのですが、当時と同じところ・変化したところ、いろいろ観られました。前回とほぼ同じ構造の写真も多いのですが(苦笑)

乗船まで

摩周丸は昭和40年(1965年)に竣工・青函連絡船として就航、昭和63年(1988年)3月まで活躍しました。その後展示船として改装され、平成3年(1991年)より公開されています。それ以来ずっとここにあるわけではなく、何度か周辺の工事や摩周丸自体の修復・リニューアルのため移動しています。いちばん最近では令和2年(2020年)2月に2週間ほど、対岸にある函館どつくに移動していました。

摩周丸は全長132.00m、総トン数8,327.71トン。旅客定員1,200名、最大速力は21ノットで、青森港~函館港間を3時間50分で結んでいました。

函館駅のすぐ近く、朝市の裏手に回るように歩いて行くと、5分とかからず摩周丸が見えてきます。
10数年ぶりの見学です。

側面の『摩周丸 函館』と船名・船籍が書かれた部分をよく見ると、ローマ字で『MASHU MARU』と書かれている右に『TOKYO』と一度書かれた(外板自体がエンボス加工されている)ものが塗りつぶされているのが判ります。これは、国鉄時代は国鉄本社が東京にあったので東京港を船籍港としていたのが、分割民営化で青函連絡船の運営がJR北海道に移行し、船籍港も函館港に移されたためです。さらによく見ると『函館』の文字が『東京』の文字の上から描かれていることも判ります。

摩周丸船尾。青函連絡船の最大の特徴は、鉄道車両がそのまま船内にはいれることです。船体最後部には船内の車両甲板の大きな扉があり、よくみると船内に通じるレールが見えています。

こちらは陸側の線路と船の車両甲板を接続する可動橋の跡です。橋そのものは失われているようです。

かつてはこのあたりにも線路があったはず。

船首側から。

摩周丸全景。前に来たときはこの位置には建物があったような気が。

乗船チケット売り場です。脚部に錆が目立ち、建設されてから歳月が経っているように見えますが、これはかつてのターミナル施設を利用しているんでしょうか?

ではいよいよ乗船です!

船内2階 船楼甲板

公開部分の案内図です。
乗船口があるのは2階、客室のあった3階が展示室になっており、4階にあたる船橋と航海甲板も見学できます。

出入口広間

通路を渡って乗船してすぐのエリアは出入口広間と呼ばれています。かつてはここに案内所がありました。現在、2階で見学者が立ち入れるのはこの出入口広間だけですが、この階には2等客席がありました。

この出入口広間にもいくつかの展示物があります。

錨は摩周丸のものではなく、補助汽船(タグボート)のものです。その後には煙突についていたJR・JNR(JRの前身である日本国有鉄道Japanese National Railways)のマークが。JNRが分割民営化されてJRとなったのは昭和62年(1987年)4月、青函トンネル開業に伴い青函連絡船が相次いで運行を終了したのは昭和63年(1988年)3月なので、JRのロゴをつけて運行していたのは約1年間でした。

ドラもありました。
…見ると叩きたくなる(苦笑

船内3階 遊歩甲板

1階上がって、3階の遊歩甲板へ。このフロアは展示室になっています。

ロビー

明治41年(1908年)就航の比羅夫丸以来の、歴代の青函連絡船の写真がずらりと。

青函連絡船のポスターが何点も。

青函連絡船の歩み

青函連絡船の歩み』コーナー。ここには、青函連絡船の歴史や、青函連絡船船内の様子を紹介する展示があります。

一等指定椅子席の座席がならんでいます。座ってみることもできます。席が1人分ずつ独立していて、65度のリクライニング式でした。

こちらは昭和23年(1948年)~昭和39年(1964年)に就航していた初代摩周丸の1/100模型です。全長118.70m、総トン数3,782.42トン、旅客定員899名と、現在展示されているに2代目摩周丸に較べるとひとまわり小さいです。船体中央に2列にならんだ4本の煙突が特徴的です。

初代摩周丸は太平洋戦争で壊滅状態に陥った青函航路の建て直しのため建造された車載客船・洞爺丸型4隻の第3船でした。当時の日本は連合国の占領下にあり、船舶の建造にはGHQの許可が必要でしたが、北海道の進駐軍への物資輸送も滞っている状況だったことから、比較的すんなり建造許可がおりたといわれています。

船員の制服など。中央の『マリンガール』というのは、昭和55年(1980年)~昭和62年(1987年)の夏期に乗務していた臨時女性職員で、乗客対応や観光案内放送などが担当していたそうです。

寝台室で乗客を迎えていた飾り毛布。後に折り返し時間の短縮で廃止されてしまったそうです。

サロン

3階船首側、前部グリーン船室や士官室があったエリアは改造されてサロンになっています。椅子やテーブルは自由に利用でき、休憩したり、大きな窓からの眺めを楽しんだりできます。お弁当を持ち込んでの飲食も可能です(ただしゴミは持ち帰らなければなりません)。

コロナ前は喫茶サービスカウンターもあったのですが現在は休止中。グッズの売店は営業しています。

サロンより前甲板を。巨大なウインドラス(揚錨機、錨を巻き上げる装置)が目の前に見えます。

船の仕組み

船のしくみ』コーナー。以前来たときには無かったモニタディスプレイがあります。なんと非公開エリアの様子をカメラでみられるというもの。青森の八甲田丸に較べて公開範囲が少ないのが弱みだと思ってたんですよねー。しかもマウスを自分で操作して、カメラを上下左右に振ったり、ズームしたりできるようです。

※今回の旅行中に青森の八甲田丸も再訪します

非公開区域モニタディスプレイ

車両デッキ。数本の線路が敷かれているのが見えます。たぶんカメラは船尾方向を向いていて、奥の壁が開閉扉だと思います。

総括制御室。船内の電力供給などを制御している部屋です。船内図によると車両甲板の下の階層で、次の第一主機室に隣接しています。

第一主機室。摩周丸は4サイクル中速ディーゼルエンジンの三井 B&W 1226を8台搭載していましたが、そのうち4台が第一主機室に、残り4台は第二主機室に設置されていました。

ここは照明が少ないのか、かなりカメラの画像がざらついています。

船舶装備品

こちらのケースには、ジャイロコンパス(転輪羅針儀、左端)や方位儀(中央下)、船の速力を測定する電磁ログ(右)など、安全な航行に欠かせない機器類が展示されています。ジャイロコンパスやマグネットコンパスの動作原理の解説もあります。

こちらのケースには、左の方には風向風力計や気圧計など、右の方には斧やドラがあります。

こちらには、浮き輪、斧、大火防護服などの救難装備が展示されています。

船の構造

船や港の構造についての展示もあります。

ディーゼルエンジンの構造を解説する模型。一応機械工学専攻なのでこのあたりは…昔勉強したようなかすかな記憶が…。

可変ピッチプロペラの構造を解説する模型。これによりエンジンを一定速度で回転させたまま船の速度・前進後退を変化させることができるようになりました。

船が可動橋で陸地と接続している状態の模型もありました。

歴代青函連絡船模型

歴代の青函連絡船の模型が並んでいます。これは初期の連絡船、比羅夫丸。日本初の蒸気タービン船です。

十和田丸(初代)と八甲田丸。

十和田丸(2代目)と津軽丸。

船内4階 航海甲板

『船の仕組み』コーナーの奥から階段を上って、航海甲板です。

船橋(操舵室)

まず、船橋(操舵室)です。船体幅よりさらに左右に1mずつ張り出した、横に長い1つの空間い鳴っています。

日曜日なのでそこそこ見学者がいたのですが、奇跡的に誰もいなくなった瞬間に撮影。

船橋中央にあるこの卓に、操船関係の装置が集められています。

可変ピッチプロペラを操作するレバー。操作すると計器類が反応するようになっていました。…もちろん器官は動きませんが。

舵を切るための装置は、昔のような大型の蛇輪ではなく、自動車のハンドルに近い大きさと形状です。

船内各所との連絡のための機器類。電話の受話器やインターフォンなどが多数。

レーダーなど。

船橋の後ろには海図台と神棚があります。

船橋から見下ろす前甲板。3階のサロンより一階層高いだけですが、ずいぶん印象が違います。

無線通信室

こちらは、操舵室のすぐ後ろにある無線通信室です。

モールスのキーを打鍵するとちゃんと音が出ます。

コンパス甲板(5階)

船橋のすぐ横から、操舵室の屋上にあたるコンパス甲板にも上がれます。

※悪天候、積雪、凍結の場合には出られません

多数のアンテナが装備されたマスト。

手すりには、函館の歴史を解説するパネルがありました。

航海甲板(露天部分)

船橋から航海甲板に出ました。

煙突のロゴはJRではなくJNRになっています。

スクリュープロペラと錨の鎖が展示されています。

航海甲板(4階)の最後部から自動車甲板(3階)を見下ろしています。12台の乗用車を搭載できます。ちょっとサビが気になります…。

多目的室

4階にある多目的室普通座席が復元されています。実際に座ったり、寝転んだりできます。

クイズコーナーもありました。解説パネルなどをひととおり読んでいないと判らない、けっこう難易度の高い問題です。

はい全問正解(笑

遊歩甲板 屋外通路

遊歩甲板(3階)へ下りて、舷側の通路を歩くことができます。

中には入れないのですが、窓から当時のままの客席を覗けます。ここは左舷側にある1等席。座席というか座敷?カーペット敷きです。

右舷側にある一等椅子席。残念ながら室内を公開用に整備する予定はないとのこと。アスベスト除去などいろいろ補修しないとダメらしく、いろいろ難しいようです。

これで見られるところはすべて見ました。乗船受付にグッズ販売コーナーもあるので記念品を購入して見学終了!10年ぶりに見られて満足した!

データ

Webサイト函館市青函連絡船記念館摩周丸公式サイト
地図GoogleMap
アクセスJR函館駅より徒歩3分
開館時間4~10月:08:30~18:00
11~3月:09:00~17:00
休館日・年末年始(12/31、1/1~3)
※『定休日となっていますが、たいてい臨時開館します』だそうです??
・3月~4月の中旬に船舶検査と特別清掃のため臨時休館
・悪天候時に臨時休館
入館料大人500円、小中高250円

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