南極観測船ふじ

ポートビルの次は、南極観測船ふじに乗船しました。昭和40年(1985年)から18年間、実際に南極観測船として活躍した船で、昭和60年(1985年)から名古屋港ガーデン埠頭に係留されています。内部には南極についての展示があり、またほぼ当時の姿のままの船自体が巨大な展示物でもあります。

第1甲板

乗船はこちらから。

食堂(エントランス)&調理室

乗船した位置は第一甲板。上甲板(船体の上面)のすぐ下です。
最初に見るのは、ふじの内部構造が判るカット模型です。

現在エントランスホールとして使われているのは、一般乗組員用の食堂でした。100名が一度に食事をできる広さがあります。食事の他、毎夕映画が上映される(テアトルふじと称していたらしい)など、娯楽の場としても活用されていたそうです。
椅子は普通のもののようですが、机は固定されています。しかも縁が高くなっていて、船体が多少傾いた程度なら食器が落ちてしまわないようになっています。

食堂に隣接する調理室。乗組員や観測隊員など230人分の食事がここで用意されていました。
人形で当時の乗組員の様子が再現されています。 食事のサンプルが美味しそうです。ワンプレートなのは配膳や洗浄の効率化でしょうか。気のせいか一般的な皿より深めのように見えるのはテーブル同様の傾斜対策でしょうか。

昭和なデザインの冷蔵庫の隣にあるロッカーのようなものはもやし栽培機です。船舶では野菜が不足しがちなので、もやしを作っていたのだそうです。

なんとなく怪我を死そうな手つき…

廊下

第一甲板の通路にもいろいろ展示があります。
壁のあちこちに掛けてある巨大なソロバンのようなものはホイールコンベヤーといい、食糧など小型の荷物を運ぶために使用するものです。この通路は船首部の倉庫から船体後方の食堂までまっすぐ続いているので、端から端まで1列に並べて使ったのでしょう。

世界各地の寄港地から贈られた盾が並んでいます。

リストロサウルスという生物の模型。本来は体長1m前後、イノシシ成獣くらいの大きさがあるそうです。三畳紀(2億年前)の生物で、南極大陸のほかインドやアフリカでも化石が発見されており、これらの大陸が当時は1つにつながっていた(ゴンドワナ大陸)という説の裏付けになっています。

各部屋

第2電信室。通信に必要な設備はすべてこの部屋に揃っているのですが、通常の通信作業は第1電信室(02甲板、非公開)で行われていたそうです。

レーダー室。レーダー送信機やタカン(航空機用標識電波発射装置)などが置かれている部屋です。

第13士官寝室。艦長以外の士官(上級の乗組員)の居室です。ふじには約33人の士官が乗り組んでいて、士官寝室は全部で17室、基本的には2人で1室です。2段ベッド1つ、机2つ、他にロッカーや洗面台などがあります。

第5士官寝室。レイアウトは違いますが、ここも第13士官室と同様にベッドや机などが2人分あります。

第2甲板

第1甲板の1つ下の階層です。ここは一般乗組員や観測隊員の居室や、医務室・理容室などがあります。

医務室

乗組員・観測隊員あわせて230人の健康を預かるふじの医務室です。手術ができる設備があり、ベッド3床の病室もありました。

理髪室

専門医がいた医務室と違って、理美容師資格をもった専任の理容師がいたわけではなく、手先の器用名乗り組員が出航前に特別訓練を受けて『にわか床屋さん』をしていたそうです。料金は無料だったとのこと。

庶務室

通知文書の作成・保管などを行っていた部屋です。

先任海曹寝室

先任海曹とは、いわゆる下士官のうち古くから任務に就いている人のことです。この部屋は10人程度の居室で、3段ベッド5台、机2つ、ロッカー、テーブル、トイレ、浴室などがあります。

奥でやっているゲームはなんでしょう?駒が白・黒・灰・赤・ピンク・黄とずいぶん種類が多いのですが。盤の周囲にバックギャモンのようなギザギザが描かれているのにそちらには駒が置かれていないし…

第2居住区

一般乗組員約105人分の居室です。3段ベッド27台、2段ベッド14台があります。船首部に第1居住区(非公開)として60人分の居室があるそうです。

士官室と違い、机やロッカーが見当たりません(いくつか棚はありますが、士官室と同サイズのロッカーが人数分あるようには見えません)。本当に寝るだけの場所だったのでしょう。

ベッド上段の下面にはいろいろ落書きがあります。
MIWAKOって誰だ。

第2居住区の一角には、下の機関室を見学出来るように床に窓が開けられています。
機関室のすぐ上ということは、全力航行中は音や振動が酷かったのではないでしょうか…。

第12観測隊員寝室

こちらは乗組員ではなく南極観測隊員の部屋です。士官室と同程度、一般乗組員に較べるとゆったりした作りです。観測隊員は50人程度で、このフロアに2~4人部屋が18室あります。
観測隊員は船の運航には関わらないので、日本からずっと南極観測船に乗っていくのではなく、オーストラリアまで空路で移動してそこから乗船するそうです。

第6観測隊員寝室

こちらも観測隊員の部屋です。写真には写らなかったのですが、右手前に2段ベッドがもう1台ある4人部屋です。

01甲板

2階上って、01甲板(上甲板)です。

南極博物館(格納庫)

もとはヘリコプター格納庫だったスペースが、南極に関する展示室になっています。

南極観測のイメージでしょうか、照明がちょっと暗いのが…

歴代の南極観測船の模型が並んでいます。近代的な砕氷船であるそうや、ふじ、しらせの他、手前の帆船は白瀬探検隊が南極に向かう時に乗った開南丸です。

雪上車は、使い込まれてあちこち傷んでいます。

2つの氷柱があります。左が南極、右が日本のものです。南極の氷は雪が固まったもので、細かい気泡を多く含んでいるため透明ではなく白くなるのが特徴。

飛行甲板

船体後部の飛行甲板に出てきました。写真は船尾に近づいてから振り返って格納庫を撮ったものです。シャッターの向こうは先ほど見学した南極博物館です。

ポートビル展望室から見下ろしたとおり、飛行甲板はふじの上甲板の大きな割合をしめています。格納庫前から船尾までは38m、ふじの全長は100mなので、後4割が飛行甲板です。
航行中は朝礼や体操もここで行われたそうです。

飛行甲板にはヘリコプターも展示されています。現地の説明板には単に『ヘリコプター』としか書かれていないのですが、シコルスキー S-61(世界中の海軍で艦載ヘリなどとして運用されていた名機)をベースに日本で製造されたものです。対潜装備を外す代わりに貨物輸送能力を強化してあるようです。製造は1965年。現在は南極観測任務には新しいヘリコプターが使われているため、除籍されています。

ちなみに、海上自衛隊の艦船で初めてヘリコプターを搭載したのは、このふじなのだそうです。
(先代の南極観測船・宗谷もヘリコプターを搭載していましたが、宗谷は自衛隊ではなく海上保安庁所属です)

士官室

士官が食堂・会議室・娯楽室・応接室として使った部屋です。
見学順路としてはブリッジを見たあとの下船直前に寄るようになっています。
現在はディスプレイで南極関係の動画を上映しています。画面が小さいのが、ちょっと…。

03甲板

見学コースの最後は、03甲板(ブリッジ)です。

ブリッジは船の頭脳、ここで船を操縦したり、指令を発したりします。
操舵装置やレーダーなど様々な装置が並んでいます。

船長席は後方中央にあるのかと思ったら(某宇宙戦艦アニメの影響)、右端にありました…。

ブリッジから見下ろす前甲板の様子。見学者は前甲板には入れません。

まとめとデータ

ほぼ昔のままの状態で保存されている船には見応えがあります。リアルな人形によって再現された乗組員や観測隊員の姿も興味深かったです。
『暗室』や『観測室』のような任務に直接関係していそうな部屋のいくつかが部屋名表示だけあって中が見られなかったのですが、これらも公開されるとより南極観測について理解が深まりそうに思いますが…。『倉庫』や『歯科治療室』、『酒保』も見てみたいですね。

Webサイト南極観測船ふじ
アクセス地下鉄 名城線 名古屋港駅より徒歩5分
開館時間通常:09:00~17:30
GW、夏休み:09:00~20:00
冬期:09:00~17:00
休館日月曜
GW、7~9月、年末年始、春休み期間は無休
入場料ふじ単館券300円
ポートビル展望室、海洋博物館を加えた3館共通券、
上記に名古屋港水族館を加えた4館共通券あり

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