森美術館【小谷元彦・幽玄の知覚】

森美術館で開催中の【小谷元彦・幽玄の知覚】を観に行ってきました。
タイトルからすると、今回は一人の作家の作品展なんですね。
※今回は撮影禁止だったので写真はありません


会場入口にはギョッとするような作品を持ってくるのが、森美術館の趣味なんでしょうか…。
【ファントム・リム】
5枚組の少女の写真なのですが…
両手の先が赤黒く、一瞬手首を切り落とされた悲惨な場面かと思ってしまうのですが…
その割には少女の表情は静か…あるものは夢みるような、あるものは物憂げな…。
近づいて良く見ると、両手で真っ赤な果物(ラズベリーか何か)を握りつぶしているのですね。
『子供の頃はそういうグチャグチャした感覚が好きだが、大人になるとキモチワルイと思うようになる。なにかの感覚が失われているのだ』
というような解説がありましたが、『ファントム・リム』とは事故などで失ったはずの手足の先が痛んだり痒くなったりするような幻覚を指すと言うことなので、手首が切り落とされているように見えるのも確信的に意味を掛けてやっているのでしょう。
【ドレス02】
髪の毛で編んだワンピースのドレス。髪の毛は日常的に目にしている存在で、もちろん自分の頭にも生えているものなのですが…人体から切り離された途端にグロテスクに見えてくるものですね。これは生きた存在なのか、死んだ存在なのか、生物なのか無生物なのか…。
【Finger Spanner】
Finger Spanner=指矯正器はピアニストの指を伸ばし大きく広げられるようにするための器具で、実際に製作されていた時期もあるそうです。大リーグ養成ギブスのようなものでしょうか、とても効果があるとは思えないどころか、かえって関節を痛めそうですが…。
そんな指矯正器を、バイオリンを思わせるデザインにした作品です。
芸術…というか『芸術に対する盲信・狂信』への皮肉でしょうか。
【New Born】シリーズ
動物のホネをイメージした作品。
とぐろを巻いた巨大な蛇の骨格…と思いきや、近づいて良く見るとそれを構成しているのは齧歯類の頭蓋骨の一部だったり、というような仕掛けの作品群です。(本物の骨ではなく彫刻作品のようです)
エイリアンのホネか、古代生物の化石か…というものも。
見ているウチに、これは生物の一部なのかそれとも最初から無機的なものなのか…がだんだん判らなくなっていきます。
【The Specter】
木造彫刻でしょうか?馬にまたがった武者の像ですが、皮膚を剥がれ筋肉が露出したミイラかゾンビのような姿です。
さらに、経年劣化したような彩色がなされ、形は近代西洋風でありながら数百年前の仏像のような味わいもあるという変わった作品です
【Hollow】シリーズ
白いテープのようなもので構成された立体像。
巨大な花、ユニコーンにまたがった少女、向かい合う2人の少女…
像の表面から立ち上がるテープ状のものが、炎のようにも、像を包むオーラのようにも見えます。
樹脂素材によるしっかりしたものであるにもかかわらず、全体が真っ白なために実在感があやふやで、霊体を実体化かのような印象。
【No.44】
映像作品。次々に飛んでくるシャボン玉が割れて白い壁?床?の上に飛び散る様子を延々とうつしているだけなのですが…。
シャボン玉の状態では気付かないのですが、かすかに赤く着色された液が飛び散った跡は血痕を連想させます。
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というわけで、ちょっとグロテスクな作品が多い展示でした。
生理的な嫌悪感と芸術性の紙一重な部分をついてくる感じです。
森美術館では2011.02.27(日)までの公開です。

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