
六本木ヒルズ・森タワー52階、森アーツセンターギャラリーで開催中の『古代エジプト』展に行ってきました。ニューヨークのブルックリン博物館のコレクションより貴重な古代エジプトの遺物約150点の引っ越し展示です。
平日の開館時刻を狙って行った甲斐あって行列はそれほど長くなく、また10人程度ずつ区切っての入場だったのでそれほど混雑を感じずに見学することが出来ました。
展示
古代エジプト人の謎を解け!
古代エジプトの人々の生活の様子をうかがい知ることが出来る品々の展示です。古代エジプト展というとミイラや神像などの大物に目が行きがちですが、ちょっとした生活用品などもじっくり観るとなかなか興味深いモノがあります。
目にとまったものをいくつか。
動物の文様のある壺、フリント製の腕輪、鳥の形をした大型パレット

展示会場のほとんど最初に置かれているこの壺に描かれている動物はワニ…らしいのですがそれにしては顔が短いですね。下の方に描かれている波線は蛇のようです。
右手前にある腕輪は木目のような模様が見えるのですが、木製ではなくフリント(火打ち石につかうような堆積岩の一種)で、叩いて加工されたものだそうです。歪みのない円形かつ表面は滑らかで、とても石を叩いて作ったものとは思えません。
ニカーラーとその家族の像

3人の人物の像。ニカーラーというのは中央の人物の名で穀物倉の書記の監督官、向かって右手はその妻カウネプティ、左側は息子のアンクマーラーとのこと。息子の方は裸のようです。石灰岩製で、身体が赤、髪が黒に彩色されています。
椰子のサンダル

椰子の繊維で作られたサンダル。このような日用品が展示されるのは珍しい気がします。実際に使用された形跡がないことから、埋葬用のものと考えられているそうです。
葬送用のゲーム盤

埋葬用のゲーム盤と駒です。一体で展示されていますが駒は盤とは別に作られたもので、展示用に盤上に配置されているようです。これは古代エジプトで人気があったセネトというゲームで、世界で最も古いゲームとされているそうです。この展示品では盤に7×3のマスがありますが、本来は10×3の盤を使う2人対戦ゲームで、それぞれ5個の駒を使用するものだったようです。この展示品は埋葬用のミニチュアということなんでしょうか。
ファラオの実像を解明せよ
王の頭部

ガラスケースではなくスタイリッシュで印象的な展示をされていますが、これは現存最古のエジプト王の像の頭部です。どの王のものかははっきりしていませんがフニ王、スネフェル王、クフ王のいずれかのものではないかとされているそうです。細長い頭部は白冠(王冠)で、全身には王位更新祭の衣装を着ていたそうです。

ナンチャテ3D写真化してみました(平行法)。
ラメセス2世の石碑

石碑はいくつか展示されているのですが、これはスーダンのアメン・ラー神殿で発掘されたもの。ラメセス2世がアメン・ラー神とムト神から王権の象徴を授けられる場面だそうです。右がラメセス2世、左手のウサ耳、ではなく2枚の大きな羽のついた冠をかぶっているのがアメン・ラー神、左端がムト神ですね。
アメン・ラー神はもともとアメン神とラー神という別々の神だったのが同一視されてアメン・ラー神となった古代エジプトの主神です。ギリシャではアンモーンとよばれ、アンモナイトやアンモニアの名の由来なんだそうです。
人物画の下には何と書かれているんだろう、昔すこしヒエログリフを勉強してみたのですが、音読はともかく意味がけっこうややこしくて早々に挫折してしまいました…。こういうとき、その場で読めたらいろいろ面白いと思うのですが。
死後の世界の門をたたけ!
トトイルディスの木棺

大物目玉展示の1つ、ミイラの入っていた木棺です。棺の底の部分に描かれているのがトトイルディスでしょうか?約2500年前のものらしいのですが鮮やかな色彩が残っているのが驚きです。
カノプス坪と蓋

カノプス壺とは、ミイラ作成時に取り出した臓器を保存するためのものです。必ず4つセット、かつ蓋の部分の意匠も決まっていて、左から順にジャッカル(胃を保存)、ハヤブサ(腸を保存)、人間(肝臓を保存)、ヒヒ(肺を保存)です。この4種の動物はそれぞれ『ホルス神の4人の息子』とよばれる神々を象徴し、また保存される臓器は古代エジプトで重要とされていたものだそうです。
ちなみに、現代人の感覚でもっとも重要な臓器である脳は、ミイラ作成時に鼻の穴からかぎ爪のついた棒で掻き出してしまっていたそうです。昔読んだ某漫画でその場面が描かれて衝撃を受けた記憶が…。
この展示の近くではミイラ製作の工程を解説する動画も上映されていました。
ネコの棺とミイラ

これも今回の目玉展示の一つといえそうです。ネコの木像に見えますが、末期王朝時代のものとされるネコのミイラの入った棺です。CTスキャンした写真も展示されていましたが…これ『中身入り』の状態で展示されていたのでしょうか。
データ
というわけで、いろいろ珍しいものが観られて満足しました。古代エジプトに興味がある方はぜひ六本木に足を運んでみてください。
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