三春城

続100名城、登城28城目は、福島県の 三春城 です。

三春城について

歴史

三春城がいつ築城されたのか、信頼できるはっきりした資料はないようですが、永年元年(1504年)に田村義顕たむら よしあきが築いたと言われています。義顕は平安時代の征夷大将軍、坂上田村麻呂さかのうえのたむらまろ の末裔ともいわれている戦国大名、田村氏の23代当主でした。

田村氏は周辺の有力豪族や大名と血縁関係を結ぶことで領地を保つ方針をとり、たとえば伊達氏とは義顕の子・隆顕たかあき(24代当主)が伊達植宗だて たねむね(伊達氏14代当主、伊達政宗の曾祖父)の娘を側室に迎え、隆顕の子・清顕(25代当主)の子・愛姫めごひめ伊達政宗だて まさむねの正室になっています。

田村氏は戦国時代末期には伊達氏につくか相馬氏につくかで分裂しますが、天正16年(1588年)に伊達政宗が三春城に入城して相馬派を排除、これ以降田村氏は完全に伊達方となります(田村仕置)。が、田村氏はその後、豊臣秀吉の小田原征伐に参加しなかったことで改易になってしまいました。三春は蒲生領となり、三春城には蒲生氏郷がもう うじさとの妹婿であった田丸直昌たまる なおまさが入城します。

その後三春城は秀吉の命によっていったん廃城~ふたたび蒲生の城となり、江戸時代を迎えます。

江戸時代にはいり、寛永5年(1628年)に松下長綱まつした ながつなが三春藩主となって三春城に入城、この時期に三春城は近世城郭に改修されました。

寛永21年(1644年)に長綱は改易に成り、翌年秋田俊季あきた としすえが入城し、それ以降は明治維新を迎えるまで秋田氏が三春城の城主でした。

幕末、戊辰戦争で三春藩は早期に官軍に降伏、無血開城したため、他の東北諸藩と違って損害を受けずに済みました。が、廃藩置県によって廃城となると建物や石垣は取り壊されてしまいました。

構造

もとは標高407m(町役場付近の上り口からは100m程度)の山頂部分に本丸を置いた山城です。江戸時代の松下氏の改修によって山麓に二の丸・三の丸が築かれ、さらに秋田氏の改修によって藩主の館が本丸から山麓に移されました。天守はなく、本丸下段の三重櫓がその代わりとなっていました。

見学ガイド

三春城周辺は現在も三春町の中心部分となっており、登城口(お城坂)は三春町役場のすぐ近くです。二の丸は児童公園、山上の本丸も公園として整備され、本丸裏門のすぐ下まで車で行くこともできます。JR三春駅からは2kmほど、登城口までは緩い上り(駅前より登城口の方が20mほど標高が高い)です。駅からタクシーで一気に二之門跡または裏門下まで一気に行ってしまうと楽です。

JR三春駅から三春城までの徒歩ルート例(タクシーでも同じ道になると想います)はこちら

いざ登城

三春城の最寄り駅は JR三春みはる です。JR磐越東線ばんえつとうせんの中では比較的大きい駅の1つです。

駅から三春城登城口までは2kmほど。歩けない距離ではありませんが、山のかなり高い位置まで車で行けることもあり、今回はここからタクシーで一気に登城しました。写真でも判るとおり駅前にタクシー乗り場があり、このとき(土曜正午頃)には3台ほどの待機列ができていました。混雑する時期/時間帯でなければ予約をしなくてもすぐ乗れそうです。

ここが登城口です。狭い上にかなりの急傾斜ですが、そのままタクシーで突入。

道は140mほど進んだ所で左にほぼ直角に曲がるのですが、その角あたりには 大堀切 があります。

二之門跡。駐車場があります。正門側から登る場合はここから徒歩ですが、今回はさらに上にある駐車場まで車で登りました。

ほぼ180度折り返しの急カーブの先、画面右奥に続く坂の上に小さな駐車場があります。そこまでタクシーで行きました。1,000円くらいだったかな。

タクシーを降りた場所(駐車場)で振り返って。左手の下り坂がいま上ってきた道です。ここから右の階段を上って 本丸裏門 に向かいます。

いきなり本丸

駐車場から本丸まではこの階段を上っていきます。傾斜はやや急ですが5~10分程度で本丸裏門前にたどり着けます。

階段の途中、踊り場状の部分に『矢倉跡』という表示がありますが、このような状態なのでどこがどうなっているのかいまいち判りません。

階段の最上部まであと少しの位置には石垣のようなものが見られます。建物はまったく現存していないので、人工物の痕跡は貴重です。

本丸裏門

本丸裏門跡。本丸は上下二段に分かれていて、左奥へ進むと本丸上段、右手に進むと下段・表門方面です。

これは本丸裏門の礎石か何かでしょうか?

本丸下段

本丸下段全景。奥に向かって曲輪が広がっており、右手の塔のあるあたりには 長屋、正面最奥に 三重櫓、VR写真で左手を向くと見える東屋のちかくに 表門、右後方に 裏門 がありました。後方の一段高い部分が本丸上段です。東屋には続100名城スタンプがあります。

本記事冒頭の三春城全体図も本丸下段にありました。この図は城時代の建物配置をあらわした図ですが、道は現在のものとほぼ同じです。図下辺中央の直角に折れ曲がった道がタクシーで上ってきた車道、図中心付近、左手から本丸に繋がるギザギザの道が徒歩で昇った階段です。

本丸下段の端、三重櫓が建っていたあたりには、なぜか『5』のような形のベンチのようなものがあります。ってベンチなのかな。高さは座るのにちょうど良さそうなんですが。

東屋と本丸表門跡。右手奥に向かって下っていく道が表門側の登城路で、先ほど通過した二之門跡駐車場から道が続いています。

これは本丸表門の礎石でしょうか…?

東屋の近くから上段に登れそうです。復元図や麓の資料館にあったジオラマでもこのあたりに門が描かれています。

本丸上段

本丸上段大広間跡。ベンチがおかれて公園のようになっています。

歌碑のようです。『佇めば 春…若木林』という一部しか読めませんでした。

こちらは『明治戊辰役三春藩烈士碑』と書かれています。

本丸上段の中でもさらに少し高くなった位置、御座間跡には、このような石積の台上の部分があります。櫓台かな?と一瞬思ってしまうのですが、旧建物配置図とは一致せず。

上には『秋田家祖先尊霊碑』がありました。秋田氏は正保2年(1645年)から幕末まで三春城主でした。

石積の近く、この写真に写っているどれかとどれかが 牛石鶴石 のはず…。

本丸裏門とにはトイレがあります。図面によるとこのあたりが 風呂屋跡 のようです。

裏門から、先ほど昇ってきた階段とは別の方向に伸びている坂を下っていくと 搦手門跡 があります。写真は搦め手門跡から本丸方面を振り返って撮影。

二の丸

さきほどタクシーで上ってきた道を、今度は歩いて下りながら見学です。本丸下の駐車場から下り始めてすぐ、右手に 二の丸 への上り口があります。現在の車道は本丸と二の丸の間の堀切跡につくられているんですね。

二の丸入口は…まぁ、原形を止めていないんでしょうね。

二の丸は遊具が設置されて児童公園になっていますが…ここまで遊びに来る子どもはいるのかな。遊具のメンテナンスもされていない感じだし。妙にリアル寄りな造形の動物とか、さび付いた金属製遊具とか…デザインも古いよね…

砂場でしょうか、いまは意味不明なストーンサークルになっています。

二の丸も上下二段になっていました。下段にはあずまやがあります。

二の丸入口までもどって車道をさらに少し下ったところには 二の丸散策路 があります。二の丸をぐるっと回ってまたこの車道の二の丸より少し上に出るようですが、足場が悪いので途中で引き返しました…。

二之門跡駐車場

さらに坂を下って、先ほどタクシーで通過した二之門跡駐車場です。

駐車場の奥には愛姫めごひめ生誕の地碑があります。愛姫とは戦国大名で三春城主だった田村清顕の娘で、後に伊達政宗の正室となる人物です。昔のNHK大河ドラマ『独眼竜正宗』では愛姫の少女時代を後藤久美子さん、成人してからを桜田淳子さんが演じていました…といえば判る人もいるのかな。

駐車場にこのような案内板がありました。本丸のものと違って現在の状態を描いたもので、しかもデフォルメされたイラスト調の図ですが、右下には本丸の建物配置が判りやすく描かれています。

駐車場の奥には本丸正門へ至る坂があります…うん、今度はこちらから本丸まで登るか…

何度か折り返しながら登っていきます。この踊り場状の部分は 揚土門跡

こちらは三ノ門跡。三ノ門跡からはまっすぐな上りで先ほどの本丸下段表門に至ります。

これで一回りしたかな?

資料館など

下山して、三春町歴史民俗資料館へむかいます。歴史民俗資料館は三春城とは別の山にあります。地図上の直線距離では近いのですが…。三春町役場横から川を渡ると上り口です。

これは歴史民俗資料館への上り口付近にあった銅像。河野廣中こうの ひろなか という、福島県における自由民権運動の中心となった人物です。明治36年には衆議院議長に選ばれましたが内閣批判を行ったためわずか1週間で衆院解散となってしまいました。

資料館へ登っていく途中におかれていた曰くありげなこの手水鉢は、三春藩江戸屋敷に合ったものだそうです。

三春町歴史民俗資料館 です。残念ながら館内は撮影禁止だったので写真はありません。
2F展示室の奥の方に三春城本丸の復元ジオラマがありました。城のかつての姿が非常に判りやすいです。
ほかに、歴史とはあまり関係ないですが三春出身の登山家の遺品が展示されていました。また、併設の 自由民権記念館 も同じチケットで見学できます。

※自由民権記念館は歴史民俗資料館と建物内通路で繋がっています。
※自由民権記念館単独での見学はできないようです。

こちらは資料館から三春駅に戻る途中にある 三春郷土人形館 です。古い土蔵を改造した展示館で、三春張子人形・三春駒・東北地方の土人形・こけしなど様々なタイプの人形が多数展示されています。
歴史民俗資料館との共通チケットもあります。

このあとは駅まで1.5kmほど、ほぼ平坦~ごくゆるい下りの道を歩き、2日目の宿泊地である郡山まで移動しました。

データ

三春城(城址公園)

Webサイト三春城と城下街
地図GoogleMap
アクセスJR三春駅より2km
三春駅より町営バスで『三春町役場』下車徒歩すぐ登城口
三春駅よりタクシーで本丸裏門下までいけます(1,000円くらい)
続100名城スタンプ本丸下段東屋、三春町歴史民俗資料館
開館時間
休館日
見学任意
入場料無料
備考駐車場あり(無料、ただしあまり広くない)
本丸にトイレあり
公園内には自販機なし、ただし麓は三春町中心部で商店などあり

歴史民俗資料館・自由民権記念館

Webサイト三春町公式サイト内、三春町歴史民俗資料館のページ
地図GoogleMap
アクセスJR三春駅より2km
三春駅より町営バスで『三春町役場』下車徒歩5分
開館時間09:00~16:30
休館日月曜、祝日の翌日、年末年始、臨時休館有り
入場料大人300円、高校生以下150円
※郷土人形館との共通券大人400円、高校生以下200円
備考駐車場あり

三春郷土人形館

Webサイト三春町公式サイト内、三春郷土人形館のページ
地図GoogleMap
※車道に面した建物ではなく、マーカーの位置から奥へ入ったところです
アクセスJR三春駅より1.5km
三春駅より町営バスで『中央大町』下車
開館時間09:00~16:30
休館日月曜、祝日の翌日、年末年始、臨時休館有り
入場料大人200円、高校生以下100円
※歴史民俗資料館との共通券大人400円、高校生以下200円

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