【一ノ関】でやまびこに飛び乗り、【水沢江刺】へ移動。
時間がありそうなら、と思っていた【藤原の郷】へ行くことにしました。
【歴史公園えさし藤原の郷】は、奥州藤原氏をテーマにした歴史公演…まぁテーマパークですね。NHKの大河ドラマ【炎立つ】の撮影時、一時的な物ではなく最初から公園として恒久的に活用することを前提に建設した大規模オープンセットが元になっているのだそうです。
その後もNHKの大河ドラマの撮影用にたびたび利用されており、僕が言った当時放送中だった【天地人】、現在放送中の【龍馬伝】もここで撮影を行っているそうです。
なかなか面白そうな施設なのですが…
駅から遠いのが難点。
最寄り駅は東北新幹線の【水沢江刺】なのですが、そこからは徒歩ではもちろん無理で、タクシーでもかなりお金がかかってしまいそうな距離。
というわけで!
1日に数便ですが、無料の送迎バスがあるとのこと。
乗り場がどこだか判らなかったので駅の売店で聞いてみると、
『藤原の郷?ああ、次の便はあと10分くらいで駅の裏の方から出るはずですよ~。
もう車は来てるかも…』
というわけで駅の裏の駐車場の方へ行ってみると…
バスじゃねぇ…。
普通のワンボックスカーだ…。
しかもけっこうボ○い…。
とはいえ、これで交通費の心配は無し。
僕が乗った13:40の便は、乗客は1人だけでした…。
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15分ほどで現着。
すぐに中へ。
目の前には政庁の門が…
…って、なんというか…
人の気配が全くないんですけど!
僕以外に観光客はいないのか!
毎度のパターンですが。
今回はこの広大なテーマパークがほぼ貸し切り状態!
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とりあえず近くの【天空館】へ入ってみました。
パーク内では数少ない近代建築。中はビデオシアターで、藤原氏の紹介をしています。
これからパーク内をあちこち散策する人のためのイントロダクションというところでしょうか…。
この地にこんなテーマパークが作られたのは、藤原氏初代の清衡が江刺で生まれたからなんですね…。
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それでは探険開始。
天空館を出て、入場ゲート正面にある政庁へ。
政庁は、2つの様式(違う年代)の物が再現されています。
1つは板葺き・板塀。
中央部以外は板の色のままの質素なもの。
もう1つは平泉黄金時代の様式で全体が朱塗りの鮮やかな物。
どちらも建物はコの字型。本来は南向きになるのですがスペースの関係で背中合わせに建てられています。
朱塗りの政庁の中央部、正殿。
回廊まで含めるとかなりの大きさになります。
中にも入れます。端から順に見学。
琵琶や太鼓などの楽器、
膳や食器などの生活用品、
鎧などの武具、
その他様々な物が展示されています。
正殿内部。
ここではかつて執務や会議が行われていました。
写真中央で椅子に座っているのが…誰だろう?
陸奥守に任じられた源頼義を藤原経清が迎える場面だったかな?
弓矢で遊んでみるコーナー。
『的』が…時代劇にでてくるような俵を使った物ですが、
鏃が尖っていないので刺さりません(苦笑)
…まぁ、矢を真っ直ぐ飛ばすのもけっこう難しかったりするのですが。
順路に従って山の方へ向かっていきます。
山の上には、当時の武家の屋敷がいくつか復元されています。
しばらく坂道を登っていくと、小型の櫓門がみえてきます。
ここから先が【経清館】。
…と言っても、藤原経清の屋敷を復元したわけではなく、
その時代(経清が江刺に移り住んだ11世紀中頃)の一般的な地方豪族の館の様式で建てた物だそうです。
茅葺き・切妻屋根の【寝殿】。
もちろんこの周辺にも【奥殿】・【西対】など多数の建物が建てられています。
馬屋の中には当時の東北地方の馬の特徴を再現した模型があります。
寝殿の中へ入ることも出来ます。
ええと…前九年の役で出陣の支度をする経清、かな?
何か所かにスピーカーがしかけられていて、近づくと解説音声が流れてきます。
経清が自分で喋っているという体で、『この先にある息子の館も見に行って下され』とかなんとか…。
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続いて、清衡館。
こちらも藤原清衡が住んでいた館を正確に再現したわけではなく、その時代の一般的な武家の館の様式を表すもの。
歴史の本に載っているので『寝殿造』という名前は知っていましたが、実際にその建物の中を歩いてみて初めてどんな建物なのか判りました。
中央に一番大きな寝殿があり、東・西・北に対屋(たいのや)と呼ばれる小ぶりな建物が並び、廊下で結ばれています。
寝殿は館の主の生活の場。大きさだけではなく、他の建物よりも床が1段高くなっていることで格式を表しているということです。
西対(にしのたい)、寝殿、東対(ひがしのたい)の全景。南側から撮影しているので北対は寝殿の向こう側にあります。
寝殿と西対の間の奥に見えるのは厨(くりや=台所)、
東対との間の奥に見えるのは湯殿だそうです。
寝殿の内部。
何の場面を再現しているのかよく判りません(汗
西対の内部。
先ほど床の高さと部屋の格について触れましたが、柱の形も部屋の格によって違うのだそうです。
この写真のように柱が丸くなっている部屋の方が角柱の部屋よりも上。
多角形に比べて、きれいに曲面を出す加工の方が手間がかかるから、のようです。
ここから先は順不同な感じに。
清衡館のある山の上から下りてくると、途中には【安宅の関】が。
安宅の関は岩手県ではなく石川県なんですが…
関所全景が復元され…どの程度正確な再現なのか判りませんが…
建物内は有名な【勧進帳】の場面が。
いわずもがな、かもしれませんが、
左手前のしゃがんでいる白い着物の人物が源義経、その奧に立っている山伏姿が武蔵坊弁慶、中央の薄い青の着物の人物が関守の富樫左衛門です。
さらに下って山道(?)を進みます。
観光客どころかパークスタッフの姿もまったく見えません。
経清館にあったような音声解説もありません。
そのまま進んでいくと…
行き止まり。
そこにあったのが、【アラハバキ神】のストーンサークル。
東北地方の古代神です。
いま一般的な日本の『神』とはちょっと雰囲気が違いますね。
これまた何の脈絡もなく突然建っている【金色堂】。
ええと…
午前中に本物を見てしまったのでどうしてもチャチに見えてしまいます。
細かい細工は省略してあるようですし、質感がいまいちですね…。
こっちを先に見ていればよかったのかな(苦笑)
本物と違って覆堂が無く、風雨に晒されているのも哀れ…。
山道から戻ってきて、次は【伽羅御所】。
奥州藤原氏最盛期、秀衡の居館を想定した物で、本格的な寝殿造だそうです。
寝殿造初期の様式であった【清衡館】と基本的な構造は同じですが、全体的に大きく立派な作りになっています。
正面から。
パノラマ合成なのでちょっと歪んでいます。本来は曲面はありません。
写真を撮っている場所の後には池があります。
池の中央に中島もあり、橋が架けられています。
屋敷の一部が池の上まで伸び、部屋からも池を眺められる構造です。
この建物も中に入ることが出来ます。
建物の中は平安時代の調度品や当時の文化を紹介する展示がいろいろ。
平安時代の遊びを紹介する展示の一部。
これは『貝合わせ』。
もともとは貝殻自体の美しさを楽しんだり歌の題材にするものだったようですが、
ハマグリの貝殻は対になるものとしかぴったりと重ならないことから正しい相手を探す神経衰弱に似た遊び方もあり、ここにあるのはむしろ後者のようです。
『双六』…マップ上で各プレイヤー1つずつのコマを進めていくものではなく、多数のコマを使うバックギャモンに似た陣取りゲーム、
『投壺』…短い矢を投げて壺の中に入れるゲーム
などが展示され、実際に遊んでみられるようになっていました。
厨の方へ行くと当時の食事が!
唐菓子、蒸しアワビ、はまち切り身、干しいわし…と、このサンプルでは魚介類が多いですね。ここには出ていませんがキジやイノシシなどの肉も食べたそうです。
かなり豪華。美味しそう…。
伽羅御所内。
ご馳走を前にした男3人…
左から藤原泰衝、藤原秀衡、源義経。
頼朝が平家打倒の兵を挙げたとの報を受け兄の元へはせ参じる決意をした義経のために、
泰衝・秀衡が戦のはなむけの酒宴を催している場面だそうです。
寝殿正面の池、中島、橋。
池の向こう側から建物全景を見ると絵になりそうな気がしたのですが、写真で判るとおり橋は通行止めで行けません…。
池の向こうに小さく見えている建物は【無量光院】。
朝、【中尊寺】見学前に発掘現場を見学したものです。
遠景であることを演出するため1/4の模型になっています。
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伽羅御所をでてさらに進むと平安時代の庶民の町を表したエリア。
そこを通り抜けて【ロケ資料館】までたどりつくと全体を一周したことになります。
ロケ資料館は、藤原の郷がドラマや映画の撮影に使われた時の写真・ビデオなどが閲覧できます。僕が言ったときはもちろん【天地人】の特集。主要登場人物と俳優の紹介などがパネルで展示されていました。
他にも過去の作品の出演俳優の手形や小道具・メイク道具の一部なども展示。
なぜか『黄金の茶室』の実物大模型(セットとして使った物?)が置いてあったり…。
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というわけで2時間近くかけて回ってきましたが、16時に水沢江刺駅行きの送迎車最終便が出てしまうのでここで見学終了。パークは17時までやっているのだから送迎車もそれまで出してくれればいいのに…。
この藤原の郷は最初に紹介したとおりNHKの大河ドラマ【炎立つ】の撮影時に、最初はドラマのオープンセットとして利用し、その後はテーマパークとして常設されるという前提で作られた物です。
各地の(真面目な)歴史公園とテーマパークの中間のような存在。
日光江戸村とちょっと似てるのかな…。それとも吉野ヶ里遺跡公園に近いかな…。
楽しみながら勉強できる!…というと格好良いのですが、『野外博物館』として見るには不正確な部分が多く、『娯楽施設』として見るにはエンターテインメント性が薄いような気はします。平日であることを差し引いても観光客があまりにも少ないのは、そんな中途半端な感じがするせいもあるのかもしれません。
駅からの交通の便が悪いのも難点ですね。吉野ヶ里は駅から徒歩圏、日光江戸村はバスを利用できるのですが、ここは公共交通機関で行こうとするとタクシーか送迎車を使うしかありません。
知名度も低いのではないでしょうか。僕は岩手県の観光ガイドを見るまでまったく知らなかったのですが…僕が知らなかっただけ?大河ドラマの熱烈なファンは『聖地』の1つとして知っているのでしょうか?
とはいえ、戦国時代~江戸時代に比べて平安後期~中世についての大規模展示を行っている施設は少ないので楽しめます。少なくとも僕は今回行けて良かったと思ました。
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【えさし藤原の郷】
http://www.esashi-iwate.gr.jp/index.html
岩手県奥州市江刺区岩谷堂字小名丸86-1
開園時間:9:00-17:00(11/1-2月末は-16:00)
年中無休(ただし天災、施設点検のための臨時休園あり)
入場料金:大人800円、高校生500円、小中学生300円
見学所要時間:『みどころ』だけを選んで回るなら1時間、全体を回るなら2時間以上
コメント
ありがとうございます。
許可していただき本当に助かりました。
使わせていただきます。
いいものになるよう頑張ります。
そういう用途なら、PHS内蔵カメラの解像度の低い写真しかありませんがどうぞお使い下さいw
はじめまして。突然コメントをし、大変失礼いたします。
私は玉川大学2年の学生です。
現在授業で、小学校6年生向けの歴史の教科書を作成するということを行っています。
私は平安時代の貴族をテーマに教科書をつくることを考えています。
教科書に使える写真をインターネットで探していたところ、こちらのサイトの写真に行き当たりました。
平安貴族の食事の写真が私が使いたいものにぴったりなので、ぜひ使わせていただきたいと思い、コメントを送らせていただきました。
私の作った教科書は授業で使用し、クラス内で発表する目的だけに使います。それ以外の使い方をすることはありません。
どうか写真の利用を許可していただけますよう、お願いいたします。